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麦の穂をゆらす風

麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション2006年アイルランド=イギリス=フランス
監督:ケン・ローチ
出演:キリアン・マーフィ、ポーリック・デラニ−、ワーアム」・ニカンガ

(´▽`)つ★★★★★

<ストーリー>
1920年アイルランドのコーク。
医者を志すデミアンは、ロンドンでの勤務が決まり、アイルランドを離れようとしていた。
時は、アイルランド自治法によって自治領成立を認めたにも関わらず、いつまでも本国イギリス領が続いていることに不満をもった民族主義らで、1919年から独立への戦いが続いていた。
イギリスに行きかけたデミアンだったが、駅でイギリス軍に抵抗する駅員の姿を見て、医者への志を捨てて仲間の元に戻り、一緒に独立を目指した。
やがて、イギリスは停戦を申し入れ、両国間に講和条約が締結された。
しかし、講和条約の内容を巡り、アイルランド国内で反条約派と条約賛派とで争いが始まった。


2006年カンヌ国際映画祭パムルドールを受賞した作品。
イギリス人監督が描くアイルランド独立とその後のアイルランド内戦ではあるけれど、イギリス軍の暴力的な描写で「反英的だ」との批判も上がった。

muginoho.jpgこういう映画は、どちらかが悪でどちらかが善・・・という視点に偏る恐れがあるので、きちんと史実を調べてのレビューです。
イギリスとアイルランドの敵対関係は余りにも歴史が長く、そもそも20世紀の初頭に起きた独立戦争だけを切り取っても計り知れない感情が両国にはあるということを踏まえたいと思います。
そして、イギリス軍の暴力的な描写に捉われ、この作品がそもそも伝えたかったメッセージを受け取り損なわぬようにしないと、ただ善と悪の二極的思考で終る危険性もあります。

アイルランドの独立に際しては、自治法案に反対していたプロテスタントの多くいるアルスター地方の義勇軍とダブリンのアイルランド義勇軍の対立もあり、アイルランド全体がひとつになっていなかったことも複雑化の要因だったのかな?と思います。
それでも、大半のアイルランド人は独立を望み、民族運動から共和国を目指すことで一致していて、政治的な運動は激化していったんですね。

muginoho2.jpgまぁ、この独立戦争の辺りは、アイルランドの敵はイギリス軍ということで一致していたため、アイルランド側に立てば「アイルランド=善 イギリス軍=悪」という視点にはなろうかと思います。
ところが、イギリス軍が撤退してからが「なぜ自分は戦っているのか?」という疑問を叩きつけられていきます。

アイルランドとイギリスが講和条約を締結し、アイルランドには自治が認められました。
しかし、それはイギリス王国を元首とするイギリスの傘下に置かれることに。
そして自治法成立に抵抗していたアルスター地方の6州は北アイルランドとしてイギリスの統治下に置かれ、自由国は26州で構成されることになった。
26州全体が反対なら問題にはならないけれど、今度はその中で条約賛成派と反対派で分かれてしまったことで、泥沼の内戦が始まってしまう。

映画の主人公デミアンは反対派であり、兄が賛成派になった。
ついこの前まで一緒に戦っていた仲間が今度は敵になる・・・ここら辺を監督は描きたかったのだろうと思います。
講和条約を支持できるか否かは、悪と善で区別されるものではないし、また区別すべきではありません。
すべては己の信念や価値観で決まってることであり、誰かに指図されたから戦うということではないことが、このアイルランドの独立に際しては重要なのです。

muginoho3.jpgデミアンが自問していたこと。
「一体何のために戦っているのか?」・・・この言葉に尽きるでしょうね。
賛成派も反対派もアイルランドのためを思っているのは同じなのに、食い違いが争いを呼んでしまっていた。
それをデミアンの兄弟間を中心に描いたことが対立の悲惨さを際立たせていました。
デミアンが裏切り者を処刑したことで、共和国への誓いを裏切ることはできなかった。
彼の戦う理由はそれだったのかもしれないけれど、「誓いを裏切らない」という理由はデミアンの中では立派な大義名分であったのかな?と思います。

信念と言えば、家を焼き払われても動こうとしないお婆ちゃんも、相当の信念の持ち主でしたね。
そして、この映画のラストは本当に見事です。
映画の中で描かれている争いは完結してはいない・・・というメッセージがひしひし伝わってきました。

※【参考】
「独立戦争」で義勇軍は国際法上定められている軍民の区別をしてません。
便衣兵(私服での敵対行為)であったために、国際法では戦争ではなく紛争扱いだそうで、イギリス軍は治安維持のための鎮圧行為ということになってるそうです。
便衣兵は民間人の犠牲も多く出てしまうため、国際法では違法行為とみなしています。

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2007年06月03日 映画ま〜わ行 2000年以降 トラックバック:0 コメント:0












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