向かいの窓
2003年イタリア=イギリス=トルコ=ポルトガル監督:フェルザン・オズペテク
出演:ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、マッシモ・ジロッティ、ラウル・ホーヴァ−
(´▽`)つ★★★★★
<ストーリー>
夫と2人の子供と暮らしているジョヴァンナ。
彼女は家族の世話と仕事に明け暮れ、事あるごとに夫と衝突していた。
そんなジョヴァンナにとって、向かいの窓から見える若い男性の姿をそっと見る時が、現実から引き離してくれるひと時だった。
ある日、夫とジョヴァンナは橋の上でたたずむ老人男性と出会う。
その老人は記憶喪失らしく、夫は保護が必要だと言い張り、自宅へ連れて帰ることになった。
※ネタバレ含んだ記事です。
日本では未公開でDVD化もされていないんですけど、イタリアでは大きな反響を得て、ダヴィッド・ディ・ドナロッテ賞の最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀男優賞(マッシモ・ジロッティ)、最優秀曲賞やカルロヴィ・ヴァリ国際映画グランプリ、監督賞などの数々の賞を受賞。
これほどの作品を日本で公開していないのは、実にもったいない。
毎日家のことや仕事に追われているジョヴァンナが、相当ストレスが溜まっていて尖がっているなとわかる冒頭のシーン。些細なことでも夫の一言一言が頭にくるって雰囲気がプンプン。
そこへ、見知らぬ記憶喪失の老人が転がり込んできて、更にジョヴァンナのイライラは増す。
記憶喪失の老人の世話は結局ジョヴァンナがするハメになり、ちょっとお気の毒なんですよ、仕事が増えたようなものですから。
しかし、この老人との出会いがジョヴァンナを変えていくことになるんです。
そして老人はかすかな記憶から「シモーネ」という名を口にした。
生活費の足しに、ジョヴァンナは週に2回ケーキを作って友人の店に収めていて、そのケーキを作っている時にシモーネは突然ケーキを作る時のアドバイスを始め、ケーキを作ることが好きなジョヴァンナに「なぜケーキ屋で働かないのか?」と尋ねる。自分のお店を持つことが夢だったジョヴァンナは、今の暮らしでは到底無理だと夢を諦めたことを話すんですね。
ジョヴァンナのイライラは、どこか夢を諦めきれずにいる自分と生活のギャップが要因のようです。
そして、ケーキを収めた後にシモーネを警察に保護してもらうつもりで2人で出かけるのですが、そこであの向かいの窓の男性とバッタリ出くわす。
向かいの窓の男性はロレンツォという名でエリート銀行員。ジョヴァンナと一緒にシモーネの身元を調べる協力をしてくれ、2人は急接近。
やがて、シモーネには若い頃、叶わぬ恋をしていたらしい・・・というところまで知った2人も惹かれ合っていたのです。
シモーネの恋とジョヴァンナの恋・・・。
実は、シモーネとは老人の名前ではなく、老人が愛した男性の名前だったんです。
記憶が戻った老人は自宅に帰るんですが、彼は有名なケーキ職人だったのです。
その老人の記憶の奥深く、60年前シモーネを愛した日々と他のユダヤ人をナチスの手から守るため、愛するシモーネを守ってあげられなかった哀しみが刻まれていたのです。
それで記憶喪失になっても「シモーネ」という名だけが口から出た・・・。
この作品で描かれている2つの愛の物語は、プラトニックなんですねー。ベタだけれど、ロレンツォがジョヴァンナを後ろから抱きしめるシーンは胸キュンものですよー。
ロレンツォは他の支店に転勤が決まり、ジョヴァンナにも来て欲しいと告げる。
心が揺らぐジョヴァンナだったけれど、夫と子供との生活を選ぶのです。
そして、今の仕事を辞め、ケーキ屋に勤めることにしたのです。
夢を諦めることなく、自分の人生を大切に生きることをジョヴァンナは老人から教えられ、不平不満をボヤく生活を自分で変えていく。
向かいの窓の男性を見ることで現実逃避していたジョヴァンナは、自分にとって何が一番大切なのかを改めて気付く話の展開。
この作品は本当に、丁寧に丁寧に作られているなーと思いました。
それと、久しぶりに凄くロマンチックな恋愛映画を観た気がします。
老人のシモーネへの愛を語る深くて情熱を帯びた言葉の数々は、もう感動物ですよー。
ラスト、ジョヴァンナの目がアップになった時、優しい眼差しに変るんですよ。
この演出は素晴らしい。
冒頭の尖がっていたジョヴァンナは、もういません。
老人役のマッシモ・ジロッティは、この作品が遺作となりました。

















